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知的な大人のためのゴルフ上達の極意 第一話 “ゴルフレッスン書を読んでいる限り貴方は上手くならない“

2017.07.19

 

Text by Shunsuke Matsuo


 

「ゴルフレッスン書を読んでいる限り貴方は上手くならないーー」ゴルフの常識を覆すような言葉であるがこれは真実である。なぜなら従来のレッスン書は体の動かし方、それができる形がレッスンの主体で、しかもその教えは文字で書かれているからだ。

 

実は人間という動物が何かを成し遂げるための動作を習得するには文字、文字で構成される文章は不要なのである、いや邪魔な存在と言ってもよい。人間は動物の中でも唯一文字を使いこなせる動物である。文字は人の考え方、歴史や知識、技術の紹介には優れた道具であり、それが故に科学や文化が進化してきたからだ。伝達の手段、道具としては最高のものだからである。

 

しかし、動作を伝達するには不適な道具でもある。それなのに何故か、今までレッスン書という文字で書かれたものが長く存在し続け、継続しているのは、「上手になりたい」と言うニーズがあるからで、それがビジネスになっているからだ。

 

まさにビジネスになるからには、なんらかの方法でそれを必要とする人たちに伝えなければならないからで、文字で表現するのが最も合理的で自然な形に見えるからでもある。しかし、もし文字で表現された技術習得の手引書が最も優れているというのであれば、頭のよい人がより早く理解してより早く上手になるはずである。子供は大人より早く上手くはなれないはずである。現実はどうであろうか、その逆である。

 

動物の子供はどうやって獲物を取ることを覚えるのだろうか?子供の鳥はどうやって飛べるようになれるのか?ここには文字は存在しない。子供が大人より早くゴルフが上達する理由と同じものがここには存在するからだ。もう少し具体例を挙げてみよう。

 

ゴルフ以外の他の球技、野球やテニスをやってきた人がゴルフを始めると難しい、という。動いている球は狙ったところに打つことができるのに、止まっている球はなかなか上手く打てない。このような言葉をよく耳にする。実はこの言葉の中にゴルフというゲームの本質が隠れているのだ。しかし、誰もこの事実を見抜いて、それを応用した技術の習得方法を説いたものがなかったのは不思議な現象である。

 

ではなぜ、動いている球を打つ方が止まっている球を打つよりやさしいのか、という事実であるが、その答えは次のように導かれる。

 

人は動物の一種である。動物はまさに動くものと書き、動かない植物とは全く違う生物として分類されている。動物は止まって静止しているのではなく、自らの意思で動くわけなので、動いている状態が通常と言える。では動いていると言うことはどのような状態なのかといえば “近未来を予測してその範囲で動く” ことである。

 

例えば野球を例にとるとわかりやすい。貴方はバッターだとする。ピッチャーが球を投げた瞬間、球が手から放たれたわずかの間にその球を打つか打たないかを判断する。どのようにしてその判断をしているかといえば、球のスピード、弾道を瞬時に予測して決めている。

 

打つとなればその弾道の延長上にヒッティングポイントを予測して、そこにボールが到達する時間に合わせて必要な力を筋肉に準備させ、バットの軌道をボールの軌道に合わせるように振り始める。そして、バットの芯でボールを捉えるように身体の動きを微調整しながら、ボールに身体を反応させているのである。

 

予測が当たれば狙ったところにボールを打ち返すことができるが、予測がずれると空振りやミスショットとなってしまう。このような一連の動作を文字で表現し相手に伝えて、相手がそれを理解して打てるようになるのは不可能なことである。

 

人間はある技術動作を習得するには、それができる人の動作を見て「その動作をする」という意思を脳に伝え、脳はそれをイメージという形で脳の中で視覚化する。そして、そのイメージに沿ってまず身体を動かし始める。

 

しかし、身体は過去にそのような動きをしたことがないので反応(筋肉への無意識の指令)することができず、どのような筋肉をどのように動かしたら良いのか最初はわからない。しかし、何回もトライアンドエラーを繰り返しながらだんだんイメージに近づいていく。

 

そして、最後に「できた!」というところに到達する。ここでいうイメージとは願望の視覚化であり、それを達成しようという意思は筋肉への指令でもある。これは動物の本能の部分でもあるとみる。文字が入ることができない領域で、「感覚の世界」なのである。

 

もう一つ身直な例を挙げてみよう。自転車の乗り方という教本はない。乗れない人は自転車と格闘しているうちになんとなく乗れる感覚をつかんでくる。そして、あるタイミングで「乗れた!」というところに到達する。では乗れなかった時と乗れた時は何がどう違うのか、残念なことに言葉や文字では表現できない。

 

唯一表現できるのは「こんな感じ」という曖昧な表現のみである。「こんな感じ」というのは人によってその感じ方は違うので「乗れた」という感覚は文字では100%表現できず、伝えることもできないのである。それを、曖昧な表現で無理やり文字にするので、相手が混乱するのである。

 

では、できる人がそれをできない人に技術動作を教える場合、どうすれば良いのか。

 

やるべきことは一つ、その動作を実際にやって見せることである。何回も、何回も見せてあげて相手がその動作を「こんな感じでやればできるのかな」というイメージができるまで見せることである。その過程においては余計な言葉や文字は全く不要である。

 

教わる人はその動作を真似てみて、それこそ微妙にやり方を変えながら何回も、何回も繰り返し行うことである。そして、自分なりの「こんな感じ」を掴み取るまで続けることで初めてイメージした動作を自分のものにすることができるのである。

 

できたらそれは一つの成功体験として身体には技術動作の記憶として集積される。しかし、完全に何回も同じ動作をやろうと思ってできるには技術の習得が必要で、その技術が身についていると言えるのは目標に対してその達成率が80%以上であれば、その技術はある、できる、と理解しては良いのではないかと思っている。つまり最終的に技術を自分のものにするには、イメージしたものが80%以上の達成率を出せるものでなければならず、この習得のプロセスが練習(EXERCISE)なのである。

 

正しい練習と言うものは、目的を持ってある技術を反復行って身につけるやり方である。例えば距離感を養う練習として、50ヤード先の直径4mの円の中に10球打って8球以上入れることができれば、その技術は身についた、と言える。では現場でどのようにそれを出していけば良いかといえば、50ヤードのアプローチショットを成功させたイメージを持つことで、自然にそれに必要な力と筋肉の動きが準備され、精神状態が平常であれば、ほぼその通りに行くのである。

 

アプローチショットの天才と言われるフィル・ミケルソンの練習方法を紹介すると、理解が進むのではないだろうか。 

 

彼は距離感を養う練習をする時、練習場所にナップザックにフェイスタオル10枚以上入れて現れる。そして、30ヤード位から120ヤード位までランダムにタオルを芝生の上に置いていく。そして、そのタオルめがけてワンバウンドでそのタオルの上に乗せて止めることをやっている。目で距離を判断して、距離に合わせた「こんな感じ」を引き出して、イメージした通りの弾道と距離をイメージと現実をより近づけることを常にやっているのである。

 

ところで初心者の最初のレッスンがグリップから入ることは人間の本能からかけ離れたことで、これではほとんどの人はクラブを握る形が気になって正しい動作ができず上手くならない。うがった見方をすれば、スクールに継続してきてもらうために、わざと難しいことをやっているのかと思うくらい異次元的なのことなのである。

 

動物である人間の本能を生かすレッスンであれば、道具を使って行うゴルフは、最初はその道具を操作できることから入るべきである。

 

具体的にはクラブを片手でもたせて地面に文字を書いてもらう。次は10個のボールをA地点からB地点までクラブを操作しながら行ってもらう。早くできるようになればそれだけクラブ操作が馴染んできている証拠でもある。その次はクラブを使ってみにテニスのようなゲームをしてみる。ブロックみたいなものをネットのように見立て相手とワンバウンドで打ち返すゲームである。ゲームを楽しめるようになると、クラブコントロールはかなりできていることになる。

 

その時のグリップはどうなっているだろうか。指先でおそらくヘッドが自由に動かせる程度の力加減で握っているはずである。右手でできれば今度は左手である。

 

形から入れば「こんな感じ」がつかめていないので想像以上に強く握ってしまう。「力を抜いてリラックスして」と言ってもどのくらい緩めて良いのかもわからないのでクラブコントロールができない。最初からつまずいてしまうのは素質がないからではなく、伝え方が根本から間違っているからである。

 

このようにゴルフは動物である人間が行うので動いていることが自然であり、止まっている球は動いていないので近未来を予測することができない。その結果、体を反応させることができず「ゴルフは難しい」ということになるのである。

 

スイングのレッスンも形から入るのではなく、生徒にこのような感じでクラブを振るというものを何回も何回も見せることで良いのである。もし言葉が必要であれば、同じような動きをする他のスポーツをイメージさせるようなことをすべきで、「こんな感じ」をイメージしやすくさせるためのアドバイスとしての言葉はあっても良いものである。

 

ゴルフ上達の極意は、「距離」と「方向」を一致させてボールをコントロールするゲームなので、その感覚を磨き、やりたいことをイメージして体にそれを反応させることを学ばなければ100を切るのは大変なことである。

 

ゴルフ上達のプロセスは脳科学のエリアであり、動物である人間の本能を刺戟するやり方でないと決して上手くはなれないのである。机の上にある、本棚にあるレッスン書は全て処分したほうが良いと思う。そして、最高のレッスン書と言われるものは、最大のライバルにプレゼントするほうが良いかもしれない。あなたが上達する間に、きっと迷路にはまって抜け出せない状態が続くだろう……。

 

Next Issue

第2話 ”ゴルフが上手くなれる人、なれない人”

第3話 ”確実に上達する練習方法とは”

第4話 ”ゴルフのメンタルタフネス”

第5話 ”空気を読む”


松尾俊介/Shunsuke Matsuo

 

1949年12月23日生まれ。神奈川県出身。東海大学工学部航空宇宙学科卒、在学中は体育会ゴルフ部副将および関東学生ゴルフ連盟の連盟委員を兼務。パイロット志望から一転してゴルフ用品販売業務に携わる。ゴルフ工房を主宰しながら、1988年からフリーランスゴルフライターとしても活動。国内外合わせて25のゴルフクラブメーカに、「良いゴルフクラブとは何か」をテーマに取材活動を続け、記事として各誌に掲載する。1989年に米国キャロウェイゴルフの取材と掲載記事をきっかけに親交を深め、その後1994年にキャロウェイゴルフからのオファーを受け、日本人初の正社員として契約。日本法人では広報担当責任者として6年間担当し、その後2014年までCorporate Relationsの担当責任者として勤務し、主に対外的な渉外活動を行う。2015年からフリーとなり、新たな活動テーマである「日本のゴルフを面白くする」をミッションに、ゴルフの普及や活性化のために幅広く活動をしている。

 

「ゴルフ市場活性化委員会」広報責任者、「一般社団法人日本ゴルフ用品協会」活性化委員、ジュニア委員、「NPO日本障害者ゴルフ協会」理事、「北海道ゴルフ観光協会」顧問。主な活動・著書に、『クラブが分かれば上手くなる!(スキージャーナル社)』、『ゴルフの楽しみ方(講談社)』などがある。


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